催眠スクリプト 作品No.01「女の子」全文

気がつくと、女の子は誰もいない静かな学校にいました。

夕暮れのような橙色に光る廊下。

遠くに下校する生徒たちの声が聞こえるような気がします。

女の子は明るい気分を感じながら、橙色に光る廊下に出た。

すると、なんだか音楽室のほうから美しいピアノの音がかすかに聞こえてきます。

女の子は軽やかな足取りで音楽室へ向かいます。

そして、小さい頃、歌を歌うのが好きだったことを思い出していました。

音楽室に着いて、音楽室の扉を開きます。

音楽室の独特の匂い。

落ち着くような安心した気持ちを感じながら、誰もいない音楽室のピアノへ軽やかな足取りで、ピアノに触れてみます。

ピアノのつやつやした光沢。

ずっしりとした木の感触。

まだ遠くに生徒たちの声が聞こえます。

女の子はピアノは弾けないけれど、ピアノの椅子に座ってみました。

ピアノの重い蓋を開けると、白と黒の鍵盤が「おかえり」と言っているような気がしました。

ポーン、ポーン、と、女の子はドの音を鳴らしてみます。

ピアノの響き。

きれいだな。女の子は思いました。

思い切って、両手を鍵盤に置きます。

すると、女の子はピアノを弾けないのに、不思議と導かれるようにピアノを弾きはじめます。

美しいピアノの旋律。

まるでピアニストになったかのように、女の子は夢中で、ピアノを弾いた。

ピアノを弾いていると、女の子は、昔好きだった男の子のことを思い出していました。

流れる旋律に任せて、女の子は男の子への愛しい気持ちを膨らませていきます。

ああ、また会いたいな。

女の子はつぶやきました。

「ラナンキュラス。好きなんだ、このお花。」

そう言って、男の子が、優しくその黄色い花に触る様子を思い出します。

微かに香る、花の匂い。

女の子もまた、そのお花に触れ、その優しい感触を確かめていました。

いつしか、女の子は男の子とショッピングモールに来ていました。

楽しそうに踊るBGMが、女の子の耳に聞こえてきます。

いろいろな綺麗な店が、わくわくするような商品を並べています。

男の子が女の子に何かを喋っていますが、その内容はどうしてだか女の子には聞こえてきません。

でも、男の子がすごく楽しそうに話しているので、女の子も嬉しくなって、うきうきした気分で男の子の話を聞いています。

手を繋ぎたいな。

女の子はそう思いました。

そして、自然と、手を繋いだような気がしました。

でも、まるで夢の中のようで、本当に繋いでいるかはわかりません。

確かな、感触。

男の子の手の、柔らかい、確かな感触。

それを感じながら、その感触はいつしか今弾いているピアノの感触に変わっていました。

今までに聞いたことのないメロディ。

でも、どこか懐かしいメロディ。

女の子の両手は自然とピアノを弾き終わっていました。

まるで大勢からの拍手が聞こえるかのように、外から生徒たちの声が戻ってきます。

そろそろ帰らなくちゃ。

女の子はそうつぶやくと、まだ橙色に光る廊下をぴょんぴょんと跳ねながら、自分の上履きがキュッ、キュッと鳴るのを聞きながら、走っていきます。

また、会えるよね。

女の子は優しい気持ちを胸に、階段を下りていきました。

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作:Ryu

YouTube-催眠スクリプト作品No.01「女の子」